変色した詰め物をセラミックによる審美的治療で改善した症例

投稿日:2024年7月4日

カテゴリ:審美治療症例

変色した詰め物をセラミックで改善した症例

こちらの患者様は以前から当院に通っていただいた方です。定期検診を行ったところ、上顎前歯2本の色や詰め物の境目が気になるとお伺いしました。

【▼初診時の口腔内】

初診時の口腔内

上顎前歯2本は外側の面にプラスチックの詰め物がされていましたが、破折する度に保険で使用される歯科用のプラスチックにて修復を行っていました。保険で使用される歯科用のプラスチックは吸水性があり、経年変化による変色や、噛み合わせ・劣化により破折してしまう場合があります。

患者様からの「きれいで長持ちさせたい」という希望から、今までのような部分的な詰め物ではなく、全体を覆う被せ物をすることを提案しました。

被せ物をするメリットは、歯全体を覆うため丈夫で材質によっては着色もなく審美的に歯冠修復ができるところです。また、デメリットは生活歯(神経が残っている歯)では歯を削る量が多くなるため、しみる症状がでる可能性があり神経を取る処理を行う場合があることです。

歯の形成量としみる症状は個人差があり、今回の症例で咬み合わせの状態や歯の切削時のしみる症状を考慮し、神経を取ってから被せ物を行うこととなりました。

神経の治療の後は、被せ物の種類を多くの選択肢の中から選んでいただくために説明の時間を設けました。

前歯に使用する被せ物の種類として、保険で適応可能な白い被せ物(金属の上にプラスチックの材料を盛って製作する冠)と自費のセラミックで審美性と性能性の良い被せ物があることを伝えました。

保険の白い被せ物は表面がプラスチックの為吸水性があり、経年変化で色が変わってくると周りの歯と調和しなくなります。

また、傷がつきやすく強度が劣るため、摩耗が進むと裏側の金属が見えてしまうことがあります。加えて顕微鏡でよく見るとスポンジのような表面のため、プラーク(細菌)が付きやすく、むし歯や歯周病のリスクが増加します。

セラミック

自費のセラミックの被せ物は陶器の皿と同じく吸水性が無く変色してくることもほとんどないのと、金属を使用しないので金属アレルギーの心配もありません。前歯部に用いるジルコニアセラミックは光の透過性に優れ、透明感ある美しさがあり、変色せず永く白さを保つことができます。

また、特殊な素材で強度が高いため永年にわたって十分使用可能な耐久性がります。セラミックは表面に傷がつきにくい特性があり、プラークが付きにくく管理のしやすさに繋がり、結果的に長く健康を維持することが期きます。

加えて、保険の金属よりも被せ物と歯の面がぴったりと合うため、被せ物の隙間から細菌が入り二次カリエス(治療した箇所から新たにできるむし歯)が広がるリスクを抑えることができます。

デメリットは、セラミックが硬く摩耗しにくい材料ですが、衝撃には弱いため、噛み合わせの強い方には欠けてしまう可能性が0(ゼロ)ではありません。

これらのことを説明し、【ジルコニアセラミック】の被せ物を選択されました。
前歯部の被せ物をする際にはプロビジョナルと呼ばれる仮歯を作製します。患者さまが理想とする形や口腔内に調和しているかどうかを共有するために重要な処置となります。

技工所

木村歯科医院では、院内に技工所を併設し、経験豊かな専門歯科技工士が、各種補綴物を一つ一つ丁寧に製作しております。多くの歯科医院は外部の技工所に外注することが多いのですが、当医院では常駐している技工士と歯科医師が常に意見交換し、患者さまに納得がいくところまでプロビジョナル(仮歯)をもとに最高の治療を提供できるようにしております。

歯周病治療

また、被せ物の型取りや装着をする際に、歯肉の形態や炎症状態は被せ物の適合精度や審美性に大きな影響を及ぼします。

被せ物の型取り前までに必要な歯周治療を行い、歯肉を整えておくことによって精度のよい被せ物を作製することができます。

前歯部はより審美性を求められるため、歯肉のコンディションを整え、支台歯(被せ物の土台の歯)とプロビジョナルの修正を進めました。

【▼治療後の口腔内】

治療後の口腔内

周囲の歯と調和するよう色調検査も行い、自然な色調、形態に仕上げ患者様にもご納得いただきました。患者様からは「前歯の色も見た目もきれいになり、治療してよかった」と大変満足いただきました。今後も定期検診で通っていただき、お口の状態の管理をさせていただきます。

【▼治療前後の比較】

治療前後の比較

年齢・性別 70代・女性
治療期間 歯の神経の治療は約1ヵ月(4回)
支台歯形成から装着まで約2ヵ月(5回)
治療回数 9回
治療費用 自費型取 3,300円(税込)
ジルコニア冠 1本 110,000円(税込み)×2本分
リスクなど ・セラミック治療においては過度な衝撃や、かみ合わせによって割れてしまうリスクがあります。
・生活歯(神経が残っている歯)のケースでは、削る量によって歯がしみる症状や痛みが想定されるため、神経を取る処置が必要な場合があります。

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